放送局向け映像機器の進化を感じられる朋栄のサイトが面白かった
朝、テレビを見ていると、右上とか左上に時計が表示されている事ってありますよね?
今を遡ること40年前、まだこの世にパソコンはおろか、8ビットCPUすら存在しなかった1971年当時、テレビ映像に時刻を合成できる「ビデオタイマ」と呼ばれる装置が存在した事をご存知でしょうか。
そんな大昔から現代に至るまでの、プロ向け映像機器の歴史を感じられる「朋栄」製品の特集サイトが面白かったので紹介しておきます。
※2014/11/4 文章ブラッシュアップ
特集サイトはこちら。
製品ヒストリー:高速度カメラ | 朋栄 × Inter BEE 2013
(※リンク切れ http://www.for-a.co.jp/interbee/history1.html)
こんな感じで時系列で製品が紹介されています。
クイズ番組の手書き回答に使われる「ビデオライタ」も扱っていたとのこと。大昔のクイズ番組でご覧になった方もいるのでは?それにしても1977年当時の技術でどうやって実現していたのでしょうか。
2012年には4Kで900FPS撮影できる高速度カメラ「FT-ONE」の発売にこぎつけます。
2012年の技術でどうやって4K映像を出力していたのよ?と、気になって公式サイトを見てみると、
1系統で4Kサイズ映像を1080p HD-SDI信号として4分割出力しながら、もう1系統では4Kサイズ映像をHD-SDIサイズにダウンコンバートした映像を出力することができます。
※朋栄公式サイトより
という力技ぶり(苦笑)。
とはいえ、そんなのはさすがにプレビュー出力で、ワークフローとしては内蔵RAMにRAWデータとして記録したデータをSSDカードリッジに吸い上げ、それを、別途DPX形式に変換してから編集にかける。という流れ。
動画のRAWデータを一旦内蔵RAMに貯めこむ仕様、というのもかなりの力技で、当然、撮影時間も4K×900FPS時わずか9.4秒、と驚くべき短さ(苦笑)。
そこまでして4Kスーパースロー映像を撮影したいのか!?という情熱を感じる製品です。
と、うっかり話が逸れましたが、技術系に興味のある人なら、ザッと見て終わり。という感じでもなく、いろいろと気になったキーワードで思わず深堀りしてしまう。そんな感じの特集サイトと思います。
他にない、新たな映像表現に非常な価値のあった時代から、そして…
このところ映像編集系の知識を更新していなかったこともあり、色々調べていたら見つけたのが今回のサイトだったのですが、それにしても映像・編集界隈もずいぶんと変わったものです。
専門外の領域でも、僕は目にしたものがどうやって作られているのか、そして、その背景にはどんな世界があるのか、が気になる質でして、普段、テレビで見ている映像がどんな機材やソフトで作られているのか、とか、割と気になってきたんですよね。
20世紀の最後だか21世紀の最初の頃だと、SGI Onyx で稼働する Inferno が地球最高峰の編集システムで、最小構成価格は1億円から、時間貸しなら1時間10万以上も当たり前、という世界だったと記憶していますが、現在だと、Autodesk の Flame Premium が割と近い位置にいて、最小構成価格は2,500万円から。と、なんと1/4の価格破壊が起こっている事が分かりました。
依然として庶民には手の届かない金額ではあるものの、それでもかなりの金持ちなら、大学生の息子が強烈に駄々をこね続ければギリギリ買ってもらえかねない範疇になったと言えなくもなく、隔世の感を感じるところです。
「映像と放送」には否定しがたい特別な力があります。しかし、その力は、ユーザーの要求という背景があってこそ初めて成り立つモノでもあります。
かつて、高価な機材でしか生み出せない特別な映像にこそ、マスを動かす特別な力が宿る、そんな時代もありました。しかし、2007年以降のニコニコ動画やYouTubeなどのオンライン動画メディアの隆盛ぶりは、以前のような「驚くべき水準の秀でた映像技術」こそが人の心を動かす。とは限らない時代を到来させました。
繰り返しますが、「放送」はあくまでもユーザー側の要求にマッチして初めて成り立つわけで、普通車1台程度の金額で買い揃えられる程度の機材でも多くの視聴者を魅了できる時代が来た、となれば、様々なモノの形も自ずと変わってくる事でしょう。
一方で、最近は新しいユーザーを湛えた新しいメディアにも高級コンテンツが流入し始めており、高い映像技術が他コンテンツへの差別化にもなり始めてきているのではないか、そんな匂いも感じるようになりました。
オンライン動画メディアは、その利便性の高さでユーザーの厚い支持を得ましたが、そこで見られるコンテンツ同士の競争、という観点で見たとき、歴史はまた繰り返すのではないか、つまり、高級機材を使った高品質なコンテンツに再び大きな力が宿る時代が来るのではないか。そんな予感がしなくもなく。
とはいえ、ライトな視聴スタイルが主流になってきている事もあって、映像に以前ほど金をかけても採算が取りづらい時代にはなりそうな予感はします。
利便性を求めるユーザーの「新しい価値観」も絶対的なものではないのかもしれませんし、映像関連が今後、どのように成熟していくか、興味深いところではあります。
<関連読み物(他サイト)>