iPhone 4S 発売に思う「実効通信速度」明記の必要性
「最高スピード144キロ! これまでで最高の電車です。」
→ でも、線路がヘボくて4~30キロ/時しか出ませーん。
って、どうなんでしょう。しかも、後半の太字部分が隠されていたとしたら…。
私は、実効通信速度の表示を義務化することで、携帯パケット通信サービスを分かりやすくするべき。と考えます。
この考えに賛成の方は、ぜひ、この記事を拡散して欲しいと思います。
今週のスマートフォン関連の話題を総ざらえにした iPhone 4S
au、ソフトバンク両社から発売されたiPhone 4Sを巡っては、WEBやTwitter・Ustreamなどを通じ、様々な情報が飛び交いました。
私もいい大人ですので、発売前情報にはある程度の不明瞭さがあるのは承知していますし、また、自由競争を建前としているこの業界ですので、明確なウソはともかく、グレーゾーンや勘違いを誘発する情報提供も販売戦略のうちか、と、甘くも見るわけです。
が、今後の消費者利益を考えたときに、どうにも看過できない、問題提起していかなければならない、そんな情報が繰り返し視界に飛び込んできました。
それは、発売前から注目されていた、au・ソフトバンク版iPhoneの速度比較に関する情報です。
ソフトバンク版の最大通信速度は公称で4.64倍も速いが…
https://twitter.com/#!/masason/status/121479933917798401
上記はソフトバンク 孫正義 社長のTwitterでのツイートです。
ここで私が問題としたいのは、孫氏が、au版よりソフトバンク版iPhone 4Sの方が最大通信速度(下り)で4.64倍も高速である。と、表明した点です。
お断りしておきますが、書かれている数値はウソではありません。
iPhone 4S の仕様と通信事業者の組み合わせにより、このような最大通信速度となる事は事実であり、このような「最大通信速度」の表記は、ソフトバンクに限らず昔から携帯各社のパンフレット等にも書かれてきた事ですから、ルールに抵触しているわけではありません。
また、この速度は規格上の最大値であり、また、ベストエフォートでもあるため、性能の保証されない事も周知の事実です。
ただ、保証されない、という事は、実際の数値がどうか。という点が、利用者にとって重要になってくるという事でもあります。
「最大」通信速度とは別に「実効」通信速度の明示を
iPhone 4Sが発売され、両社の回線状況が明らかになる中見えてきたのは、「最大」通信速度と「実効」通信速度の「乖離」は、auの方が圧倒的に少ないという事実です。
これはつまり、孫さんの言う「ソフトバンクの方が4.64倍速い」という裏付けがなかなか見えてこない状況。とも言い換えることができます。
この状況を見るに、孫さんが、消費者に誤謬を引き起こすような実効性のない速度表記をあえて拡散した事に対して、私はルール違反ではないが、誠実じゃない、とも思うわけです。
特に、au版・ソフトバンク版のどちらにしようかと皆が見極めている中で、あえてこの情報に脚光を浴びせるあたりが商売上手というか、まぁ、みんなが勝手に注目したのかもしれませんが、とにかく、いろいろと思う所があるわけです。
もちろん、事情を知っている人からすれば、14.4Mbps対応している006SHなどの夏モデルと7.2Mbpsモデルとの実効通信速度があまり変わらない事から、iPhone 4Sも大して変わらないだろう。という事は容易に想像できていたわけですが、何も知らない一般の方の視点も忘れてはいけない、とも私は思うわけです。
そういう視点から、私はみんなに分かりやすい指標として「実効通信速度」を表記してはどうか。と提案するのです。
「実効通信速度」はソフトバンクのネットワーク改善をアピールできるチャンス
現在の話しはともかく。将来、という話しになると、auよりソフトバンクモバイルの方が規格と実態の乖離が大きい分、伸びしろがある。という捉え方もできます。
ソフトバンクさんが言う、今後2年で1兆円という多額の設備投資の成果は、ベストエフォート方式の「実効通信速度」表示により分かりやすくアピールできるのではないか。とも思うわけです。
最後に
業界全体の信頼。という事を考えた時、お客様からみたときに分かりやすく、かつ誠実であるか、という事を移動体通信事業者各自がいま一度問い直す時期に来ているのではないか。そう思う昨今であったりします。
また、これは別に携帯会社に限った話しではありませんが、どの会社が誠実なのか、信用できるのかというのを見極めるのは大事なことです。
公言している内容と実態に乖離がある相手とのお付き合いには気を付けるようにすると、人生は少しハッピーになるかもしれません。
※見出し画像の著作権表示
© lauren nelson – Will you be my Friend? (CC BY)
from flickr - http://www.flickr.com/photos/lulieboo/3295178379/lightbox/
ななし says:
13年前
フレッツ光100MB!
で100MB出ることなんてあり得る?
孫さんだけ槍玉に挙げるのは誠実と言えるのかな?
admin says:
13年前
長文をお読みいただき、合わせて、コメントも頂戴しありがとうございます。消費者の利益を考えた上で思うところがあり書いた記事でしたが、このようなコメントをいただいた事は悲しい事です。長くはなりますが、記事の補足を持って回答に変えさせて頂きます。今回の記事では、諸所勘案の上、3Gパケット通信に対象を絞って書かせていただきました。そのためご指摘いただいた固定ブロードバンド回線における回線速度表示については記事内にて言及しておりません。記事の趣旨からは外れますが、私としましては、固定ブロードバンド回線の実効通信速度についても、当記事と基本スタンスは同じであり、実効通信速度の表示がなされるのであれば、それは消費者にとって望ましい事であると考えております。ただし、その一方で、私は、何でも規制・統制をすればよい。というスタンスでもありません。業界内で自主的にモラルが守られているならば、このような表示は必ずしも必要ないとも考えております。例えば、固定ブロードバンド市場においても国内市場シェア21%以上を獲得している(責任ある立場のはずの)メジャープレーヤーが、他社よりも4.64倍以上高速なサービスである事を銘打っておきながら、今回のソフトバンクモバイルさんと同程度に実態が伴わないようなケースがあり、しかも、その状況が長く続くような事があるならば、私は固定ブロードバンドにおいても、実効通信速度の表示がされるべきと考えます。
また、槍玉に。というご指摘ですが、ある事象を伝える。という当ブログにおける私の役割を考える上で、大変に思うところのあるご指摘と考えます。例えば、ある事象について記事を書く場合、当然、その事象を取り上げる事自体が記事の目的となるわけです。その際、その事象のみならず、係る類似事例の表記が必要。という規則は本質的にはございません。また、重大なミスリードを起こさせるべく今回の事例を特に意図的に抽出したつもりもございません。実際、今回の事例は非常にエポックな時期であるからこそ発生している事例であると私は考えており、そもそも、類似事例は無いのではないかと私は思うからです。それが故に、ソフトバンクのみでなく、業界全体のルールとして実効通信速度の表記を提案しているわけであり、固定ブロードバンドへの言及を避けた経緯がございます。以下に、私が考えるiPhone 4S発売の背景の特異性について列挙いたします。
・アナログ的要素により実効通信速度が大きく左右される無線通信技術に関しており・それが、高速通信にまつわるものであり・(技術に詳しくない人も含めた)国民に広く浸透し、利用されている技術に関する事であり・キャリア毎に採番される別型番でなく同一製品名を冠した機種で、インフラ提供企業だけが異なるため、一般消費者視点で見たときにインフラの違いを比較しやすい例であり・その機種の出荷数が、我が国人口に比して無視できないほど多い事。
これらすべてがAND条件で揃っているのが、今回のiPhone 4S発売の背景にあるものと考えております。このような条件を満たした上での類似事例(他社比較と実態との乖離)が存在するならば、私はその誤認を引き起こさせた人物に対しても、今回の記事と同様の言葉を並べたでありましょう。
移動体通信は貴重な電波を使うサービスです。ベストエフォート式であるからこそ、この品質で、こんな低価格で利用できる事、専有するとなればどのくらいのお金を払わなければいけないか、などの背景は重々承知しておりますが、一般消費者の視点からみたとき、最高通信速度が相対的な他社との性能比較に幾何かでも使われている現状を鑑みるに、他社より4.64倍も高速である事をうたっておきながらそこまでの数字が出ていない現状に対して、私は業界の信用度が問われないかを憂慮しているわけです。と同時に、私の意見はあくまでも一意見です。人がより分かりやすい表示を必要としないのであれば、導入の必要はないでしょう。私は一石を投じただけで、波紋が広がらなければそれはそれでよいのです。
誰が誠実かどうかについては、第三者が判断する事でありますから、その判断に委ねます。ただ、私は、iPhone 4S発売前後の1週間、Twitterなどに流れる特定陣営からの朝真暮偽の情報をみなさんがどう受け取ったのかについて憂い、業界の健全な発展を願う一人の人間としてこの記事を書いた。という事でございます。