VXX空売りのリスク。底値からの倍率は過去の歴史を越える可能性も
この記事を書いているのは2022年3月7日。恐らくはまだ正式な名の付いていない戦争がロシア・ウクライナ間で始まって12日目のことです。
旧G8メンバー国であったロシアに対する SWIFT 停止、原油価格の高騰、人類史上初となる原子力発電所の軍事占拠、ルーブルの暴落など、ショッキングな見出しが踊るわりに、VIX は冷静で30台前半。まるで年に2度はある相場の嵐くらいの反応となっています。
さて、そんな物騒なご時世ですが、建付けが複雑な金融商品が大好きな管理人が気になるのはやっぱり「VXX」。
ここでは VXX が何なのか、については一切説明せず、お分かりになる方だけを対象に、僕が10年は思い続けて来た、とある心配ごとについて、適当に書き連ねておきます。
バックミラーを見て運転する奴は事故る
私の座右の銘の1つに「バックミラーだけ見て運転する奴は事故る」というものがあります。
これは、過去には起こらなかった事でも未来には起こりうる、という心得であり、相場のみならず、人生のあらゆるところで活かせる戒めであります。
ちょっと逸れますが、例えば、法律や明文化されていないコードも、時代とともに移り変わるものです。「Things change.」とは私の好きな言葉ですが、お若い方だと、「罪の観念ですら変わってゆく」という感覚が理解できない方もいらっしゃるかもしれません。
話を戻しましょう。
いずれにせよ、過去のチャートから未来を読めない事は皆さん良くご存知のとおりであり、VXX が底値から最大何倍くらいまで騰がる可能性があるのか、つまり、マージンをどの程度入れれば安全に空売り出来るのか、を過去のチャートから知ることはできない、という本質を今回は指摘したいのです。
VXXに底値からの最大倍率はあるのか
冒頭で阿らないと書いてはみたものの、VIX や VXX のモデリングに精通している人間がわざわざこんなモノを読むとも思えないので、やはり阿ってすこぶる簡略化して書いていきます。
VXX は VIX 先物をロールオーバーし続ける ETF です。
その VIX 先物と VXX が S&P 500 の暴落時、どこまで急騰する可能性があるのか、について、過去の大暴落などに照らし合わせて考察している記事を、昔、読んだ記憶があります。
その記事を書かれた方は、もちろん、全てをお分かりの上で書かれたのだとは思いますが、VIX は、S&P 500 がこれだけ下がったらここまで騰がる、というものではなく、あくまでも市場参加者のアウトルックによって大きく変わってくるものです。VIX はヒストリカルではなくインプライドな指標ですからね。
で、うろ覚えなんですが、その記事によれば、過去のブラックマンデーだったかに当てはめると、VXX は底値から10数倍まで騰がる可能性がある、と書かれていた記憶がありまして。(倍率は間違っていたらごめんなさい)
それはそれで短期的にはあり得るよね、正しいよね、とは思うものの、それとは別に、VIX 先物のバックワーデーションが異常に長く続いたら、VXX ってそれどころじゃなくもっと騰がりうるよね、というリスクも指摘しておきたくてですね。
人間社会というものは、荒れていれば、政治なり政策なり、ともかく何らかの営為によって安定した状態に持っていこうとするもの、という性質があります。
万が一、荒れたままだとしても、荒れている状態で安定してさえいれば、恐らくはそれを平常として VIX 先物はコンタンゴとなり、結果、VXX は減価するでしょう。
そう考えれば、VIX 先物のバックワーデーションが異常に長く続く、なんて事態はそうそう無さそうな気もするわけですが、それは、皆が、少なくとも今より未来の方が荒れない、と思える情勢であることが前提です。
逆に、未来の方が荒れそうだ、という見込みが長く続けば、VXX は、バックワーデーションによりゆっくりながらも先の想定を越えてさらに騰がる、そういうシナリオは少なくとも描ける、というわけです。
少々、前置きが長くなりましたが、言いたいことはこれだけです。
VXX は、まだ世界の歴史の転換点を乗り越えてはいない新しい金融商品です。
ロシア側としても長期化を避けたいでしょうから、ここで指摘したリスクが今回の戦争で発現するとも思いません。また、VXX ではバックワーデーションの影響よりも VIX 先物の動きの方が短期的には遥かに大きいため、ここで「VXX は青天井だ」と言うつもりもありません。
ただ、今回の件は、心のどこかに留めておいた方が良い事だとは思うので、敢えて書いておきました。