Google Pixel 8 Pro長期使用レビュー。良カメラ。AIが身近になる楽しい機種。ただしゲームは苦手

 2023年11月10日

Google 純正スマートフォン「Google Pixel 8 Pro」をメイン端末として1ヶ月ほど使用して感じたことを書いておきます。

同機のレビュー記事としては最後発になるかと思いますので、仕様・機能は極力他誌に譲り、僕が感じたことを中心に書いていきます。

使い込まない人には Google スマホならではのプレーンさが楽しめる機種。使い込む人には特にカメラ・音声周りの機能や AI 編集が楽しい機種と感じます。

一方で、超重量級ゲームは明らかに不得意。良い部分、悪い部分をまとめてレビューしていきます。

良:持った瞬間、手に馴染む「丸み」

Pixel 8 Pro を最初に持って感じたのは、その手馴染みの良さでした。

最初は、フロスト加工の背面の質感がその秘訣かとも思いましたが、

数日使い込むうちに、この良さは本体の角の丸さ・滑らかさから来ているのだと確信。

Pixel 7 Pro と比べれば一目瞭然。Pixel 8 Pro は角のRが大きめに取られています。

※ 左が Pixel 7 Pro、右が Pixel 8 Pro。Pixel 8 Pro の方が角の丸みが柔らかい。

Pixel 7 Pro は角が手に刺さる感触ですが、

Pixel 8 Pro では丸みが手に優しくフィット。かなりの違いがあるわけです。

ラウンドディスプレイ → フラットディスプレイへ変更されたのに、本体は 8 Pro の方が丸い。これはちょっと意外なポイントと言えるでしょう。

R のサイズも絶妙で、(製品に依るでしょうが少なくとも僕が買ったテキトーな)ケースに入れても馴染みの良さがあまり損なわれないのもポイントと感じます。

良:フラットディスプレイ化でガラスフィルムも安心

Pixel 7 Pro では画面の端が曲面の「ラウンドディスプレイ」が採用されていましたが、Pixel 8 Pro ではフラットディスプレイ化。

これにより、ガラスフィルム貼付時のタッチパネル感度低下が発生しずらくなっています。

※ 左が Pixel 7 Pro、右が Pixel 8 Pro。8 Pro は画面のエッジの丸みがなくフラット化。

Pixel に限らず、ラウンドディスプレイ採用機ではガラスフィルム貼付時のタッチパネル感度低下が問題になりがち。Galaxy にせよ Pixel にせよ、個人的にいつも苦労するポイントですが、今回の Pixel 8 Pro は苦労せずにガラスフィルムを装着できました。

ラウンドディスプレイでも、適切なガラスフィルムを正しく貼りさえすれば感度の問題は出ずらくはなりますが、発売当初はガラスフィルムの選択肢が少なくてハズレを引いたり、また、そもそも貼付けに失敗してしまうこともあるので、これはかなり嬉しい点です。

良:加工しやすい画作りのカメラ。RAWで撮れば弄り放題。玄人ほど色々試したくなる

※ Pixel 8 Pro のメインカメラ最広角で撮影。無加工。

これまでのスマホのカメラに求められてきたのは「手軽さ」と「パッと見のキレイさ」かと思いますが、Pixel 8 Pro のカメラは少し方向性が違う「未来志向」。

シーンを選ばず撮って出しでも映えがちな Galaxy 系とはちょっと違う、「使い手の理解」が要求されるカメラ。撮って出しでの撮れ高はさほど多くない代わりに、加工しやすい写真が撮れる印象を受けます。

Pixel 8 Pro のカメラは間違いなく素晴らしい部類であると高く評価しますが、AI 処理など後工程での編集・調整のしやすさに配慮してか、シーンによってはコントラストが若干眠めに撮れがちな傾向があります。

そのため、撮って出し前提なら、食事や室内よりも風景・夜景といった高コントラストのシーンの方が映えやすそうです。

※ 低照度でも手ブレの少ない Pixel らしいキレイな写真が撮れる。夜景向き。コントラストの高いシーンなら何気ない場所でも画になる。無加工。

レンズのゴースト耐性を確認。ゴーストは出るには出るものの、昔の iPhone ほどは悪くない印象。シーンによっては盛大に出る場面もありましょうが、スマホのカメラとしては及第点と思います。

※ 建物上部の強い点光源周辺にゴーストが発生している作例。

食事は、照明や食材によって大きく仕上がりが変わる印象。うまく撮れる場合もあれば、

色温度・ティントなどが微妙にズレることが少なくなく、撮影時、または後で加工が必要な場面は少なくありません。

※ 上2枚と同じ座席で撮影。青被りしている。

また、Pixel 8 Pro の特徴である光学5倍ズームも大変便利。動物の撮影だけでなく、遠くの看板の文字を読むといった用途でも活躍します。

ただし、最近のスマホのカメラは前ボケが作れる程度には被写界深度が浅くなっており、ピント調整が若干シビアになっているのは注意点。(下の写真は若干後ピン)

※ 光学5倍ズームレンズで撮影。デジタルズーム併用で221mm(35mm換算)相当。無加工。

そんな事情もあってか Pixel 8 Pro ではフォーカス周りの機能が強化され、ピーキング表示とAF+マニュアルでのフォーカス調整が可能。ピント合わせの際にはぜひ活用したいところです。

ポートレートモードのボケの自然さをテスト。フリース素材の帽子と背後のボケの境目もわりと自然に処理されています。後方左、金属棒に不自然なボケの侵食が見られますが、SNS 出し程度なら十分な画質でしょう。

※ 一部で熱狂的人気を誇る、未来リス「アピタン」。ポートレートモードで撮影。撮って出し。

また、Pixel 7 以前同様、カメラアプリや Google フォトの編集機能で後からフォーカスポイントや被写界深度の調整も可能。ただし、どちらも調整範囲には限界があるため、加減を知っておくのが撮れ高を増やすコツになります。

消しゴムマジックや編集マジック、ベストテイクなどの高度な AI 編集機能も Pixel の魅力の1つ。AI 性能強化により AI 関係の処理が明らかに高速化されているのも、写真を後加工する機会の多い Pixel 8 Pro では嬉しいところ。

Pixel 8 Pro のカメラの問題点を1つだけ挙げるとするなら、昔ながらのスマホカメラ、一眼カメラユーザーのどちらにも、ワークフローの変革を求める点かもしれません。

Pixel 8 Pro のカメラは、基本的には、

  1. 被写界深度深め+コントラスト眠めで複数枚撮影
  2. 構図を選別
  3. 後からボケ味・被写界深度・コントラスト・白黒レベル・カラーなどを調整して「自分色」にして出す(AI も活用)

というワークフローで使うケースが多そうですが、これは、旧来からのスマホカメラユーザーにも往年の一眼カメラファンにも若干の「むず痒さ」を感じさせる部分があるものです。

具体的には、例えば往年のカメラファンの場合、撮影時でなく後から被写界深度やF値(絞り)に相当する要素を調整するフローへの慣れや、それに付随する撮れ高への不安。また、旧来からのスマホユーザーであれば、ここは勝手に色を飛ばして「映え」優先にしてくれても良いのに、と感じる部分など様々。

良く言えば先進的ではあるのだけども、これら幅広い要望を sRGB の色域でハンドリングするには限界があるし(※高色域でも撮影は可能)、また、ボケ味についても後編集だと思ったとおりにならないケースは少なくなく、F値くらい撮影時に決めさせてくれ!と叫びたくなる人だっているはず。全員の要望・期待に同時に応えることはできないけれど、その中で絶妙な落とし所を見つけている、それが Pixel 8 Pro のカメラ+編集機能のように思います。

いずれにせよ Pixel 8 Pro は、ここ数年でよく見かける疑似 HDR 的なのっぺりとした画作りを緩めに避けつつ、そして、加工・編集が当たり前の時代に扱いやすい画作りと、AI 編集の生産性でもって個々人の色を表現しやすい機種です。

良:急速ワイヤレス充電器「Pixel Stand(第2世代)」は、ぜひ買って欲しい

Pixel の Pro シリーズを使う理由がここにある、というくらいの便利ガジェット、それが「Pixel Stand(第2世代)」。

Pixel 6 Pro / 7 Pro / 8 Pro を最大23W、Pixel 以外の Qi 対応機器を最大 15W(EPP)で急速充電できるワイヤレス充電器になります。

Android は iPhone と比べてバッテリー容量が大きく、それだけ高出力の充電器が欲しくなるわけですが、「Pixel Stand(第2世代)」があれば USB 充電の頻度がかなり下がる感じ。やはり、Pixel 8 Pro の 5,050mAh のバッテリーを満たすにはこのくらいの出力でないと物足りません。

Pixel 向けに設計されているので、MagSafe / Qi2 非対応の Pixel でも充電位置がズレづらいのが良い点。Android なのに超高速でワイヤレス充電ができる逸品です。

2024年に登場予定とされる「Qi2」も、今のところ最高出力は 15W のままと聞いていますので、Pixel の対応機種のユーザーは、まだしばらくの間はこのワイヤレス充電器が最強、ということになりそうです。

Google ストアでは 9,570円(2023年11月時点)となかなかの高級品ですが、Pixel 購入時にもらったクーポンでぜひ手に入れて欲しい商品です。オススメ。

悪:重量級ゲームは相変わらず苦手。タイトルやシーンを選ぶ機種

先代である Pixel 7 シリーズのゲーム性能はいまいちでした。Pixel 8 Pro の 3D はピーク性能こそそれなりに向上したものの、総合的なゲーム性能はお世辞にも褒められないまま。少なくともゲームタイトルやシーンを選ぶ、というのがゲーム性能に関する僕の評価になります。

Pixel 8 Pro の3D性能はミドルクラス相当のため、解像度・設定を落とせばフレームレートはそれなりには稼げますが、ストレージなりメモリ周りなりの最適化に問題があるのか、場面転換でのロードの遅さやもたつきはかなりある印象。

なんなら Pixel 7 Pro よりもサーマルスロットリングがキツいせいか、百数十名が入り乱れる MMORPG のイベントで時間に追われて各所を周るシーンでは、数年前に発売された iOS 機や Snapdragon フラッグシップ機(Snapdragon 888 とか)より出遅れるのはもちろん、端末の冷却状況しだいでは Pixel 7 Pro より重く感じるときすらある有様。

(C) LEVEL-5 Inc. (C) Netmarble Corp. & Netmarble Neo Inc. All Rights Reserved.

兎にも角にも、超高負荷状態に弱い端末、と感じます。まだゲームエンジン側の最適化が進んでいないだけなのかもしれませんが、それにしては酷く重いシーンがあるので、ひょっとするとスレッド数の多さやバックグラウンドプロセスの影響を受けやすいのかも、という予感すらしてしまうレベルです。

他社 Android フラッグシップ機に良くあるゲーム支援機能(アプリ毎の解像度・描画設定・FPS上限設定など)がほとんど用意されていないのも BAD ポイント。

Pixel 8 Pro の「ゲームダッシュボード」機能には、

スクリーンショット、録画のショートカットボタン、FPSのフローティング表示と、通知制御くらいしか機能がありません。

「原神」や「二ノ国 Cross Worlds」のような超重量級3Dゲームを快適にプレイしたいなら iPhone 15 Pro や Snapdragon 8 Gen 2 / Gen 3 機を買うべきであり、コストパフォーマンスうんぬん以前の問題として、少なくとも Pixel 8 シリーズを選ぶ理由は全くありません。

とはいえ、Pixel 7 Pro ではプレイする気が全く起きなかったシーンでも、Pixel 8 Pro でならそこそこ遊べる場面が増えたのも事実。重めの 3D タイトルのデイリーやクエストを回す程度であれば、Snapdragon 機を引っ張り出さなくても良い印象です。

逆に軽量な 3D タイトルであれば、Pixel ならではの素直で高速な反応の恩恵に預かれる場面は少なくなく、これらの事から Pixel 8 Pro はゲームタイトル・シーンとの相性がかなりある端末、という総評とさせて頂きます。

悪:Androidのデータ移行は再ログインが面倒

これは Pixel 8 Pro の問題でなく Android 側の仕様ですが、Android は iOS デバイスに比べて機種変更時の環境移行が大変です。

「Pixel 8 はワイヤレスで楽々データ移行」みたいな話が世には溢れていますが、あれを真に受けて iPhone から移行すると、多分、面食らうはず。

これでも昔に比べればかなり楽にはなったのですが、Android のデータ移行機能を使った後でも、基本的には多くのアプリで再ログインや機種変更の手続きが必要で、これが依然として面倒なままなのです。

Google パスワードマネージャーに対応していれば再ログインなんて楽、かと思いきや、最近は多くのアプリ・サービスで2段階認証が要求されるため、SMS で大量のログイン用パスコードを受信するハメに。

中にはアプリのログイン状態・アカウント情報をそのまま移行してくれるアプリも無くはないものの少数派。このあたり、アプリデータをそのまま移行できる iOS は偉大だなぁ、と感じてしまいます。

パスキーの普及で改善されたりしないのでしょうか。

発売当初は新しすぎて使えないアプリ・機能があった

これは Pixel あるあるですが、Android のバージョンが新しすぎて一部のアプリが動作しなかったり、動作に支障が出るケースはどうしても出てきます。

Pixel 7 も発売当初、ごく一部ではあるものの不安定なアプリがあった記憶がありますが、Pixel 8 Pro も2023年10月19日時点で以下のような不具合が発生しており、そのうちの半分は11月10日現在でも解消されていない状況です。

  • 「ANAマイレージクラブ」
    → アプリが起動しない
    → 10月20日前後に修正済み
  • 「二ノ国 Cross Worlds」
    → 数時間プレイ後、アプリを落として再起動するとアプリが落ちてログインもできない。
    → アプリキャッシュの削除で暫定対処可能。現在でも症状が続いている
  • 「FRep2」
    → Ver 2.3 RC 版なら動作するが、使用後、システム全体でタップが不安定になる症状が出る場合がある
    → Pixel 8 というより Android 14 で広く問題が発生している。
  • 「Revolut」
    → Google Pay のタッチ決済登録に失敗する
    → 10月20日に再確認したら解消されていた

もっとも Google 製品ということもあってか、アプリとの相性問題は急速に改善される傾向があるため、さほど心配してはいません。

また、別問題にはなりますが、発売当初は「Google 翻訳」アプリの読み上げ機能が Pixel のジェスチャーナビゲーションとの相性が悪く、ボタンをタップしても反応しない、という問題がありました。(※ 画面端からスワイプする「戻る」アクションとタッチ領域が競合していたとみられる。)

※ 発売当初、「Google 翻訳」アプリの画面端にある「読み上げ」ボタンが非常に押しづらい問題があった。

現在はこの問題は解消してはいますし、当時でも感度の設定変更や3ボタンナビゲーションへの変更により緩和・解決できる問題ではありましたが、海外旅行中に遭遇したらさぞかし嫌な症状だったろう、とは感じた部分ではあります。

このあたりの「新しいが故の不都合」については、皆さんどういうわけか言及されないわけですが、数百ものアプリを使いこなすヘビーユーザーが発売日に入手して使い込むと、こういったイライラする部分はある、という点は指摘しておきたいところです。

余談ですが、FRep2 は Android 13 + Pixel 7 Pro が最強だったんじゃないか疑惑があります。Android 14 ではフレームレートの問題なのか、状況次第では特にスワイプ動作の精密性に難があるような。。。あと、操作速度も遅くなってるような。まだ RC 版なので今後改善されるかもですが、それでもこの方式だと改善にも限度があるような。。。

AI≒アプリ。使いこなしで評価が変わるスマホ

Pixel 8 Pro には2つの側面があります。1つは Google 純正のプレーンな Android スマホという側面、そしてもう1つは AI スマホという側面です。

前者はこれまでの Android の使いこなしの延長線上にある話ですが、後者は AI を利活用するアプリを使いこなせるかどうかで評価が変わってくる部分にはなります。

この「AI の使いこなし」という点でも Pixel シリーズはよく練られており、「Google フォト」「レコーダー」といったよく使うアプリから、簡単に「ベストテイク」「編集マジック」「消しゴムマジック」「音声消しゴムマジック」といった AI 機能にアクセス可能。

UI 設計の良さのお陰もあってか「あれ?あの機能どこだっけか?」と探すことは少なく、また、カメラの性能も相まって、写真を扱うのが楽なスマホ、という評価です。

最悪、操作方法を忘れてしまっても、Google 公式の取説ともいえる「Pixel シミュレーター」「Pixel ガイド」の対象となっているため安心。

また、プレインストールされているアプリ「Pixel ガイド」からもどんな機能があるか把握できるよう配慮はされています。

逆に言えば、写真や動画、音声をあまり撮らない人からすると、そもそも Pixel 8 Pro の AI 機能の恩恵に預れる機会は少ないでしょう。

重いゲームは不得意ですが、(バックグラウンドでバッテリーを無駄に消費する悪いアプリさえ入っていなければ)思っていたほどバッテリーの持ちも悪くありませんし、暑い日でなければ日常使いの操作感も快適。

色々と問題があったとしても、Pixel 慣れしていると「どうせ使っているうちにアップデートで良くなるだろう」と楽観的になれるのも Pixel ならではの安心感。

万人に勧められるわけではありませんが、新しいもの好きで超重量級の3Dゲームをプレイしない人、写真を良く撮る人であれば面白い機種なのではないかと思います。ただし、値上げでコストパフォーマンスがだだ下がりなのがなんともですが……。

Hatena Pocket Line

コメントを記入