「AMD Radeon™ Dual Graphics」ベンチマーク結果と実運用上の落とし所
引き続き AMD の新APU「Trinity」をいじくりまわすシリーズです。
前回の記事はデュアルグラフィックス構成を組む上での注意点・設定方法・所感でしたが、今回は具体的な「数字」のお話です。
前回の記事: AMD TrinityでDual Graphicsを試した感想と設定方法のメモ | TeraDas-テラダス
※追加の結果が得られた場合は追記する可能性があります。
ハードウェア・OS・ドライバ構成
今回のベンチマークで使用したハードウェア・OS・ドライバの構成は以下の通りです。
- CPU : A10-5800K
- MB : Gigabyte GA-F2A85X-UP4
- SSD : Intel SSD 330 240GB(SSDSC2CT240A3K5)
- メモリ : Corsair Vengeance LP 4GB x 2(CML8GX3M2A1866C9R DDR3 PC3-15000 CL9-10-9-27)
- VGA : SAPPHIRE ULTIMATE HD6670 1G GDDR5 PCI-E HDMI/DVI-I/DP または iGPU(Radeon HD 7660D)
- VGAドライバ:Catalyst 12.9 Beta + Application Profiles 12.9 CAP 1
- 電源 : 玄人志向 80 PLUS BRONZE(KRPW-SS600W/85+)
- OS:Windows 7 64 bit Service Pack 1
5つのベンチマークでデュアルグラフィックスの特性と実運用の落とし所を捉える
今回は AMD Radeon デュアルグラフィックスの性能だけでなく、その特性や、使用上の落とし所を探る目的で、以下の5つをベンチマーク計測しました。
- iGPU(APU内蔵GPU)単体性能
- dGPU(外部GPU)単体性能
- iGPU + dGPU デュアルグラフィックス時性能
(ディスプレイ接続:iGPU側 / dGPU側 別々に各1回) - dGPU 単体 + VirtuMVP HyperFormance 適用時性能
(※参考値として)
また、皆さんが手元の環境と比較しやすいよう、無料で入手できるベンチマークソフトのみを使いました。
ベンチマーク結果:3DMark 11
3DMark 11 BASIC Performance(1280x720)の結果は以下の通り。
●iGPU / dGPU単体でのスコア
左:iGPU単体 (HD 7660D) / 右:dGPU単体(HD 6670)
●AMD Radeon デュアルグラフィックス使用時のスコア
左:iGPU+dGPU (iGPU側出力) / 右:iGPU+dGPU (dGPU側出力)
●参考用スコア:dGPU(HD 6670)+ Virtu MVP HyperFormance
結果を表にまとめると以下のとおり。
SCORE | GRAPHICS | PHYSICS | COMBINED | |
iGPU単体 (HD 7660D) | 1594 | 1447 | 4166 | 1370 |
dGPU単体 (HD 6670) | 1818 | 1656 | 4138 | 1650 |
デュアルグラフィックス (iGPU側出力) | 2515 | 2483 | 4147 | 1687 |
デュアルグラフィックス (dGPU側出力) | 2542 | 2528 | 4144 | 1653 |
dGPU (HD 6670)+ Virtu MVP HyperFormance | 2550 | 2390 | 4169 | 2368 |
このように、DirectX 11対応のソフトでは順当にデュアルグラフィックスの恩恵を受けられるようです。
また、「DirectX 11対応ソフトでは」 デュアルグラフィックス使用時、dGPU / iGPU 側のどちらからディスプレイ出力しても性能差はほとんど無いようです。
アイドル時消費電力は iGPU 側から出力した方が若干低いので、この結果だけを見ると iGPU 側からディスプレイ出力したくなるのですが、実は別の要素もあるので、その件については次のベンチマーク結果をご覧ください。
Virtu MVP HyperFormance 使用時のスコアの伸びが異常に良いのが気になりますが、3DMarks 11との組合せだと異常にスコアが伸びるという報告があった気がしますので、あくまでも参考値と捉えた方が良いでしょう。
ベンチマーク結果:PSO2
ファンタシースターオンライン2(1280x720)のベンチマークの結果は以下の通り。
●iGPU / dGPU単体でのスコア
iGPU単体 (HD 7660D)
dGPU単体(HD 6670)
●AMD Radeon デュアルグラフィックス使用時のスコア
iGPU+dGPU (iGPU側出力)
iGPU+dGPU (dGPU側出力)
●参考用スコア:dGPU(HD 6670)+ Virtu MVP HyperFormance
結果を表にまとめると以下のとおり。
SCORE | |
iGPU単体 (HD 7660D) | 2514 |
dGPU単体 (HD 6670) | 4458 |
デュアルグラフィックス (iGPU側出力) | 3675 |
デュアルグラフィックス (dGPU側出力) | 4426 |
dGPU (HD 6670)+ Virtu MVP HyperFormance | 3980 |
DirectX 11非対応ソフトだからか、現時点ではPSO2でデュアルグラフィックスの恩恵を受ける事はできないようです。
また、PSO2+デュアルグラフィックス使用時は、 dGPU 側からディスプレイ出力したほうがスコアが多少良く、実際に体感差も感じました。
これらの結果は、AMD公式FAQの内容を裏付けるモノと言えます。
AMD公式FAQにはこのあたりが誠実・正確に書かれているため、デュアルグラフィックスの世界に足を踏み入れる前に一読する事をオススメします。
アイドル時消費電力が最も高いのは、デュアルグラフィックス+dGPU出力時なのですが、DirectX9~11を通した総合的なパフォーマンスが最も良いのもこの組合せと思いますので(常に最高というわけではありませんが)、パフォーマンス重視なら「デュアルグラフィックス+dGPU出力」構成を選ぶのが幸せと思います。
PSO2 では Virtu MVP HyperFormance 使用時のスコアが落ちました。が、HyperFomance はアプリケーション毎に適用可否設定ができるため、適用しないよう設定すれば良いだけでしょう。
総合的に考えると…
DirectX 11世代のゲームでは内蔵GPU + 外部GPUのパワーを合わせてパフォーマンス改善が期待できますが、DirectX 9世代のゲームがメインなら、強力なビデオカードを一枚挿す方が幸せかもしれない。そう思えるベンチマーク結果となりました。
ただ、その場合、Trinity よりスコアを稼ぎやすい構成もありますので、あくまでも内蔵GPUベースでここまでのパワーアップが狙える、と理解する事が重要そうです。
事あるごとに繰り返しますが、A10-5800K は通常のWindows操作であれば、現時点でも十分なパフォーマンスを提供してくれます。
アプリの起動時間、WEB閲覧、文書作成、いずれの用途でも必要十分な性能を発揮してくれて、しかもこのお値段、という強みは確実にあります。
しかしその一方、古い世代の3Dゲームに関してはある程度限界があるのも事実です。
今後のドライバ更新によって状況が変われば評価も変わってくるとは思いますが、少なくとも現状ではこのとおりですので、用途に合わせて選ぶ事が重要なのではないか、というのが、管理人の所感です。
最後に、ウチではこのデュアルグラフィックス構成のマシンで Skyrim をフルHDで遊んでいる人がいる。という事だけはお伝えしておきます。60FPS を出せる場面は多くはありませんが、この構成にしては意外と遊べるので驚いています。