FreeS/WAN によるVPN Masquerade の実験
第1回 IPSEC とは

Linux-eden >> 第1回 IPSEC とは

 

  • はじめに

     インターネットは、もともとバケツリレーのような通信方式を基本としているため、盗聴・改ざん・なりすまし、などの潜在的リスクを持った状態で運用されています。
     これらのリスクが許容できない用途においてもインターネットのメリットを享受するためにVPNという手段が考えられました。

     VPNは、ネットワーク上に暗号化通信経路を確保して、そこを仮想的な経路として使用するため技術です。

     今では、IPSEC、L2TP、PPTP、CIPE など、さまざまな VPN 実装が選択でき、使用目的や運用形態により、それぞれを使い分けます。

     ここでは、Net-to-Net の VPN接続に向いた IPSEC 実装として、FreeS/WAN を導入し、Windows2000 Professional (Service Pack 2 以上)からの接続までを追ってみたいと思います。


  • IPSecで「できること」と「できないこと」

     IPSec だからなんでもできる。ということは当然ありません。
     以下にIPSecの特徴と制限についてまとめてみました。

    特徴

    IP層以上で動作するすべてのプロトコルをまとめて保護できる
     HTTPS などと違い、ひとつのアプリケーション毎に、ひとつの暗号化通信経路を使わないので、たくさんのアプリケーションプロトコルが入り乱れた状態のIP経路を丸ごと保護できます。

    暗号化通信経路は、媒体に依存せずすべて保護される
     レイヤー1・レイヤー2の媒体に依存しません。つまり、PHS -> ISDN -> Internet -> Ethernet のような伝送路でも、上でIPプロトコルが動いていれば、保護されるということです。

    ユーザーは特に意識することなく利用できる
     普段、ルーターの存在を気にしながらインターネットをしないのと同様に、ユーザーからは、あくまでも「あるべき経路」として見えます。

    異なるベンダーの異なる機器間における、相互運用に配慮した設計になっている
     このため、ルーター間のVPNに使われる事が多いのです。

    暗号化アルゴリズムを特定しない
     DES-CBC 以外の暗号化アルゴリズムをオプション扱いとしているため、将来、暗号が破られたとしても、暗号アルゴリズム部分以外は仕様の使いまわしが効く設計になっています。


    システムのIPSEC以外の部分がセキュアでないとだめ
     IPSec以外の部分に穴があれば、そこから侵入されるかもしれません。当然ですね。

    end-to-end の暗号化ではない
     基本的に2つのIP機器間の暗号化ですので、たとえば2つのルーター間のみをトンネリングするIPSecでは、最寄のルーターよりも自分側と、最遠ルーターよりも相手側にある経路については保護できません。

    なんでもできるわけではない
     上位プロトコルのすべての機能をを提供するわけではありません。たとえば、特定の人物のための電子証明書が必要なら、それは、別の機能として実装する必要があるということです。

    ユーザーではなくマシンを認証する

     IPSecは、マシン間通信については強力な認証システムを使用しますが、ユーザーIDの概念は持っていません。たとえば、データベースのユーザー認証には、IPSec以外で機構が必要です。IPSecは、接続の制御と、そこでの通信が安全になされるようします。それがすべてです。ユーザー毎のアクセス制限や、データベース認証などは、通信する両者間で、IPSecから独立して行ってください。

    DoS は防げない
     DoS攻撃はシステムクラッシュや過負荷、サービスの停止を目的に行われます。
     IPSecにはこの攻撃を防ぐための機能は実装されていません。(あたりまえですね)

    トラフィック解析は防げない
     IPSec は、IPプロトコルの上に成り立つVPNです。
     したがって、トンネリングモード時はスタートポイントとエンドポイントのIPアドレスが、また、トランスポートモード時にはパケットの発信元と目的地のIPアドレスがIPパケットに直接書かれています。
     IPアドレスが分かるということは、セキュリティーホールを突かれたり、流量の測定をされることくらいはありうるということです。


     
     制限が多いようにも見えますが、実際には、あたりまえのことばかりが書かれているだけです。特にIPSecが劣っているということではありません。


  • FreeS/WAN

     まず最初に、このソフトを開発している FreeS/WAN プロジェクトにお礼を申し上げたいと思います。
     特に、WEBサイト上に、非常によくまとまった資料があり、これのおかげで随分助かりました。
     オープンソース系の開発元で、これだけまとまった資料を用意されてる例が無いわけではありませんが、まとまり具合は上位に入ると思います。( Apache Software Foundation なんかもすごいものがありますが(笑) )
     このソフトは、Linux上のIPSec実装として大変有名なソフトです。
     次のページでは、この FreeS/WAN についての説明と、インストールの準備にかかりたいと思います。


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